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フリーランスが法人化すると変わること

更新日:
投稿日:
2016年10月26日

フリーランスを長くやっていると、考えるようになるのが法人化。
法人化すると実際どのような変化があるのでしょうか?

ボンデザインは、フリーランスで9年活動したあとに法人化して丸3年経ちました。
その経験から、フリーランスと法人でどこが違うか、自分なりに気づいたことを書いてみたいと思います。

1)給与制になる

法人化して一番大きな違いを感じたのが、給与制(月給)になったことです。
フリーランスのときは、売上がすべて個人の収入となりましたが、法人になると会社の売上の中から月給として支払われるようになります。
当然仕事には波があり、月によって売上が多いときも少ないときもありますが、毎月一定額を支払う必要があります。
もらう個人の立場からすれば売上が多くても決まった額しか手に入らず、支払う会社の立場からすれば売上がなくても支払わなければいけません。

また、フリーランスの人が法人成りするときは多くの場合社長になるので、役員という立場になります。
役員は普通の社員がもらう給与ではなく、「役員報酬」で支払いを受けます。
役員報酬と普通の給与の違いは、年の途中で金額を変更できないこと。
また、業績が好調だからといって、役員の場合は年の途中で賞与を出すこともできません(できないことはないが損金(経費)にならない)。
つまり、一年に一度、売上見通しをたてて、役員報酬の月額を決める必要があるのです。
あまり月給を少なくすると個人の収入が少なくなり、多くし過ぎると会社が赤字になってしまいます(実際には節税のために、わざと赤字にする会社も多いようですが)。
会社に利益が出て法人税を払うのと、個人の収入にして所得税を払うのと、どちらが得かということも判断材料になってきます。
いずれにせよ、フリーランスのときより、年間の見通しを考えて仕事をするようになります。

2)社会保険

フリーランスのときは、健康保険は国民健康保険、年金は国民年金です。
法人化しても国保と国民年金にしているところも多いですが、すべての法人は人数に関係なく、社会保険の加入義務があります(強制適用事業所)。フリーランスの法人成りなど一人会社の場合でも、法人であれば社会保険に入る必要があります。規模が小さい法人の場合、健康保険は協会けんぽ(全国健康保険協会)、年金は厚生年金になります。

健康保険も年金も、社会保険に加入すると金額が上がります。
社会保険の場合、健康保険も年金も会社が半分負担することになっていて、例えば健康保険料が月額2万円であれば会社が1万負担するので、自己負担は半分の1万円で済みます。これが会社員がフリーランスに比べ、待遇がいいと言われる点ですね。
ただ、一人会社の場合は、会社といっても結局自分の稼ぎから出しているわけなので、保険料負担はとくに楽にならず、かえって大変になります。

毎月の保険料が増えるので、フリーランスのときより手取りは減ります。これだけみるとマイナス面しかないように思われますが、良い面もあります。
支払う保険料が多いということは、当然将来もらえる年金の額も増えます。国民年金は基礎年金分しかありませんが、厚生年金は給料に応じて上乗せして支払っているかたちになり(いわゆる二階建て)、将来それに応じた年金支給があります(あるはず・・・)。
また、結婚していて妻の所得がそんなに多くない場合、夫が社会保険に加入していれば、妻は国民年金の第3号被保険者として年金保険料を納付しなくてもよくなります。フリーランスのときは、夫と妻それぞれで国民年金を払う必要がありましたが、妻分は払わなくてもよくなるのです。家庭の状況に応じて試算してみると良いかもしれません。
あと、社会保険には「傷病手当金」という、病気やケガで働けなくなったときの生活保障として、給与の約6割程度を受給できる制度があります。これは国民健康保険にはない保障で、民間の就業不能保険でカバーすることも可能かもしれませんが、社会保険の利点といえそうです。

3)経理が煩雑になる

上の2つだけをみても、フリーランス時代とは経理に必要な知識が違います。決算もフリーランスの確定申告とは違い、大変複雑です。
すべて自分でやるのもいいかもしれませんが、多くの人は法人化を契機に税理士さんに頼むようになると聞きます。ボンデザインも法人になってからは税理士さんにお願いしています。

もちろん税理士報酬はかかってきますが、利点も多くあります。
フリーランスのときは、わからないことがあると検索で調べていたのですが、これはとても時間がかかります。調べてもわからなかったり確信を持てないときもあったりします。
その点、専門家に聞ければ時間も節約できますし、確実です。また、アドバイスもいただけますので、自分だけで考えている以上の知識を得ることができます。
3年経ったところで振り返ると、税理士報酬を払う価値は充分あったと思っています。
もっとも、これは自分に合った税理士さんとお付き合いできるできるかどうかも、大きなポイントになりそうです。今は総合事務所とお付き合いしているのですが、担当も同世代くらいの若い税理士さんで、レスポンスも早く大変助かっています。以前フリーランスのときに、年配の税理士さんにお願いしたことがあるのですが、そのときより今の方がやりやすく感じています。最近はクラウド会計が普及してきていますので、そういった面に理解のある税理士さんがいいかもしれません。
 
 
以上の3点が法人化したときに大きく変わったところです。
経理的なところばかりですね(^^;)
ただ、実務的な話ばかりではなく、経理をとおして意識も変わってきたと思います。
法人化すると、実際は全部一人でやってるのに、
・会社の代表者としても自分
・会社の株主である自分
・従業員的な仕事をする自分
と、いろんな立場の自分を感じます。
これを経理という作業をとおすことで、わかるようになってきます。正直以前は、「経営」ということを考えたことがなかったのですが、法人化してからは意識するようになりました。
振り返ってみるとフリーランスのときはやはりどんぶり勘定だったと思うところもあり、その点でも法人化して良かったです。

あと、法人化すると信用力があがるとよく言われますが、これについては個人的にはあまり大きく変わった気はしません。
法人でもフリーランスでも同じくらいの人数構成でやっていれば、お客さんからの見た目もそんなに変わりません。業種によるかもしれませんが、Web制作の場合は少人数でやっている分には、法人でもフリーランスでも印象に大差はなさそうです(まったくない訳ではないですが)。
法人化したからといって、融資を受けやすいということもありません。社会的な信用度については、そんなに変化はないと考えています。

つらつらと思いついたことを書きましたが、もし、フリーランスで法人化を検討している方がいれば、この記事が少しでも参考になればうれしいです。

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